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    29/12/2008

    第一章 上等兵、着隊。

    第1部 国防陸軍ハ国民ト領土ガ脅カサレル時、初メテ其ノ独立ヲ守ルモノトス。


    第一章 上等兵、着隊。

     

    「駐屯地司令に敬礼!捧げー、銃!」

    号令をかけた男が右手を真っ直ぐ伸ばし、指先を眉毛に付くか付かないか微妙なところで敬礼をする。号令にあわせ、彼の後ろにいる横隊の二人は持っていた小銃を体の前で掲げた。掲げられた小銃の先端の銃剣が朝日を浴びてキラリと光る。

    その3人の前に対峙している男、駐屯地司令と呼ばれた男が敬礼をし、直ぐに手を下ろした。

    駐屯地司令が手を下ろしたのを確認すると号令をかけた男も手を下ろし、

    「立てー、銃!」

    と号令をかけた。またもや後ろ2人は号令にあわせ銃を元の位置、気をつけの姿勢をとる。

    「駐屯地司令以下、4名集合終わり!」

    「おはよう!」

     

    ゼルゲン小規模駐屯地。エストレンド帝国北東部に位置する国境ギリギリの村、ゼルゲン村に存在するその名の通り部隊編成5人で編成されるゼルゲン警備隊が駐留する小さな駐屯地。

    「本日より、えー、皆も知っての通り警備隊に新たな仲間が加わる。新人の手本となる様に清々と行動するように。では課業始め、事後の行動に掛かれ。」

     

    その小さな小さな駐屯地はいつものように小さな小さな一個分隊にも満たない隊員たちの、小さな小さな朝礼を終えいつもと同じ新しい朝を迎えたのだ。

    ただひとつ、いつもと違う何かを迎えるため、いつもと同じ駐屯地には、いつもと違う空気が流れていた。

     

    まだ世界の空は澄み渡るように蒼く、遥か遠くから流れる空気が美味しい頃、

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    聖桜暦686年、

     

    「だぁー、お尻痛ー」

    首都、リオシュンから大陸横断特急で48時間、途中乗り換えで東西地方巡回特急で72時間。人の体は長い時間揺らされるように出来ていない。もっとも、鉄道ファンや鉄道事業に携わる人間なら話は別だろう。

    大きな皮鞄を右手に、ついでに左手は腰の辺りをスリスリ‥見事なまでの老人仕草で列車を降りるのは若い女性、いや少女である。彼女は決して旅行しに来たわけじゃない。なぜなら彼女は制服姿である。彼女のすぐ目の前を黒い制服姿の若い男が通り過ぎる。彼は駅員である。もの珍しそうに横目で彼女をチラ見したのは体調不良そうな少女に勤務上、声をかけようとしたのもあるが「お、この娘、良い体してんじゃん」などと下心がなかったと言えばウソになる。しかし彼女の服装を見てその確信たる下心は見事に玉砕した。

    スポーティなポニーテール、突き出した胸、左手でさする可愛いお尻‥までは良かったのだ。畜生。

    問題は服装である。

    茶系に近い黄土色の上着、薄茶色のネクタイ、オリーブドラブ色に白線の入ったスカート、大腿部までを包むニーソックス、磨き上げられた半長靴。襟には金色に輝くバッチ、左腕にはワッペンが二枚縫い付けてある。そして、彼女の腰を巻く白ベルト、剣帯に吊り下げられた刀剣、これらの品々が彼の眠りかけていた精勤心を叩き起こしたのだ。お蔭様で今日も一日清清しく働けそうだ、色んな意味で、ありがとう。

    危うく今日の晩御飯のおかずにされそうだったとはつい知らず(いや可能性はゼロではないが)荷物を担ぎ上げ、改札を出る。駅を出ると人が少ない‥というかいない。

    「いやぁ、田舎だねぇ‥」

    そういえば目的地までの行き方知らないや。列車降りたときにいた駅員さんに聞けば良かったかな。でもあの人、トイレ行っちゃったんだもん‥他に地元の人でもなんでも、通りかからないかな‥。

    晩御飯どころか、朝ご飯のおかずに決定されていた彼女は、第一村人を発見した。

    やったね、嬉しいね、これで目的地が分かるね!そこのおばーちゃん道教えてー!

    「すいませーん、ちょっとお尋ねしますけど、ゼルゲン小規模駐屯地へはどう行けばいいんですかー?」

    「‥‥あんだって?」

    少女は絶望した。

    それから10分間、少女は大声で話しかけなければならず、その度に老人は「よく聞こえんもんでのぉー」とか「えぇー、なんだってぇー?」というのだ。そしてようやく話が通じたのか、

    「おぉ、話には聞いておる。今度来た新しい軍人さんじゃろう?名前は確か‥確か‥、ゆ、ゆ、ヨナヨナ・ネグリジェ‥‥だったかな?これからこの村をよろしく頼むぞい」

    だだだ、誰が夜な夜なネグリジェですって?そんな名前を子供につける親を私は見てみたいよ。

    引きつる表情を無理やり笑顔に変換しつつ、

    「私の名前はユナ・アンシュリーナですよ。これからよろしくお願いしますね!」

    「え?‥あんだって??」

    ユナは再び絶望した。

     

    そんなやり取りを少し離れた場所から始終眺めている人影があった。

    「昔の私もあんな感じだったかなぁ」

    彼女の服装もまたユナと同様で彼女が軍人であることを証明している。

    「お、気づいた気づいた」

    見ると老人とのやり取りを諦めたユナがこちらに気づいたのか真っ直ぐ向かってくるではないか。

    「あ、あの、ゼルゲン駐屯地の方ですか?」

    ユナが質問する。こいつめ。私はあの老人よりもずっと前にいたのに気づかないなんて‥ちょっとお仕置きが必要かな。

    「違うよ」

    「え?」

    「私はゼルゲン駐屯地の人間じゃないし、ここはゼルゲン村でもないよ。となり村のカーラル。」

    「ぇと‥、その‥‥、わ、わたし、今日配属になって‥‥えと、ここからゼルゲンまではどれくらいかかるんでしょうか‥?」

    すっかりパニック状態だ。くぅー、かわいーなお前!もう少し楽しませてもらおう。

    「歩いてじゃ無理だよ。列車も今行っちゃったし‥1日1本しか走ってないからー‥あれ?」

    ユナはすっかり泣きそうだった。あやーやりすぎたかな?も、もう可哀想だし許してもいいかな?

    「うーそっ!」

    「‥ふぇ?」

    ネタ晴らしをする。

    「ゼルゲンへようこそっ!」

    「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっっっ!!!」

    今日一番の泣き声がゼルゲン村全域に木霊した。

     

    その頃ゼルゲン小規模駐屯地でも‥、

    「なんか、ふぃぃぃぃんとか、聞こえね?」

    「変な音しましたよね」

    「まぁ、いいや。巡察いって来い」

    「…はい」

     

    * * *

     

    「ごめん、ごめん。駐屯地まで、荷物半分もってあげるからさぁ、機嫌治してよ」

    まさか、ここまで泣かれるとはおもわなかったなぁ…と思いつつ彼女の重そうな荷物を軽々と持ち上げる。

    「いぇ、そこまでお世話になるわけには…!」

    「いいの、いいの遠慮しなくて。私はこれでも腕っ節には自信あるんだよ?」

    たしかに彼女が持ってきた大きい荷物は重さとしては20キロぐらいあるのだが、ずいぶん軽そうに持っている。っというかキャスター付きの鞄なのになぜ持ち上げるのだろう?

    「道案内するから、歩きながら話そうか。自己紹介とかまだだったよね。えーっと、私の名前はレナ。レナ・ミランジェロ。階級は軍曹だけど、”ミランジェロ軍曹”とかはやめて欲しいな。うーん…レナさんって呼んでくれていいや。皆そう呼んでくれるの。今向かってるゼルゲン警備隊では皆の世話役ってところかな?料理とか洗濯とか家事のほとんどは私がやってる。私の趣味みたいなもんだから、君はのんびりしてて構わないよ。あー…最後にに年齢はー…22才。君からみたら…もうおばちゃんみたいなもん…なのかな?」

    「そ、そんなことないです!まだまだ若いですよ!!」

    「ありがとう。でも君がいっても説得力ないよ?10代さん?…なんて冗談冗談!君も自己紹介してよ!」

    冗談って…目が笑ってなかったですよ…。

    「えーっと、私の名前はユナ・アンシュリーナです。あー…17才…です。2週間ほど前に軍学校を卒業したばかりです…。」

    「軍学校っていうことはやっぱり所属は3術連だったの?」

    この国の軍隊への入隊制度はいろいろある。一般的なのは「志願兵」として2等兵からの入隊。他にも「士官候補生」のエリートコースと「下士官候補学生」や「下士官候補士」といった中堅コース。そして「軍学校生徒」という特別コースがある。

    「はい、専攻が魔法学科だったので第3術科連隊でした。ミランジェロぐんそ…違った、レナさんも軍学校出身なんですか?」

    軍学校とは教育省ではなく陸軍省の下に存在する教育機関で、基礎カリキュラム自体は公立の学校と変わらないが「軍事教練」の講座がプラスされる”将来的に軍人”になるであろう人のための学校である。

    通常、軍学校では義務教育の終えた初級学校の卒業生12~13歳を対象に入学を受け付ける。そして入学試験では学力試験、適正試験、面接試験を全て合格して晴れて入学となり、その後本人の適正により3種類の内いずれか1つの学科を専攻することになる。

    一つ目は第331歩兵連隊付隊が担当する通常学科。通称、歩兵学科。中級学校に相当する一般科目に加え、剣士・銃士過程がプラスされる。

    二つ目はティアナ騎士団が担当する騎兵学科。中・上級学校に相当する一般科目と騎兵・儀じょう過程がプラス。普通、貴族や王族だけが入学を許される。

    そして最後に第3術科連隊が担当の魔導学科。中級学校に相当する一般科目と大学に相当する魔術研究学科、魔導過程がプラスされる。

    「ううん、私は違うけど、君と同じ部屋になるダグリス君に聞いてみると良いよ。確か軍学校卒業生だから。…軍学校の生徒だったのに髪が長いんだね、ユナちゃんは」

    軍学校の生徒は男子も女子もだいたいが短髪であるがユナの今の髪型はポニーテールですっきりとまとめられてはいるものの、腰の辺りまで長さがある。普通に考えれば長い。

    「学年で何人かは許されているんですよ、長髪が。何が基準でどうゆう意味があるかは分からないんですけどね」

    「なんだか謎めいた学校だね。私の場合は下士官候補学生で入隊したから…入隊前はユナちゃんほどじゃないけど長かったよー。まぁ、最初の訓練隊でバッサリ切られちゃってね……あ、そろそろ着くよ!」

     

    駅から歩いて15分ほどだろうか、小さな川が見えてきた。そして、小さな川のすぐ向こうには少し高めのレンガ塀に囲まれて低めの塔が立っているのが見える。遠くから見ると話に聞いていたより大きそうな建物だ。

    「小規模駐屯地っていうからもうちょっと小さいかと思っていたんですけど、予想よりも大きいんですね」

    「にゃはは……ユナちゃん、あれはそう見えるように作ってあるだけなんだよ。実際、敷地なんて一般の家庭の二つ分くらいだし、あの隊舎だって普通より少し大きいお家に見張り塔を建て増ししただけなんだから」

    確かに、近づくほどに分かる小ささ。分かりやすく言えば、一般的な教会ぐらいの大きさだろうか。そして駐屯地の憲兵のいない衛門にたどり着くと、ふいにレナが衛門に張り付いている金属製の重そうな看板を指差した。

    「昔はねー、ここの駐屯地にも色々な部隊が居たんだよー、ほら」

    確かに彼女の指差す看板には様々な部隊名が刻まれていた。

    第101歩兵科連隊…

    北部方面騎兵大隊…

    術軍出向教導団…

    北方通信電信郡…

    101連隊付衛生隊…

    5004会計隊…

    ゼルゲン地方憲兵隊…

    「…こ、これ全部ここに居たんですか?」

    これだけの部隊がそろえば人数的には7000~8000人といったところだろうか。どう考えても庭付き一戸建ての二倍では建物はおろか敷地にすら入りきることは出来ない。つまり、不可能である。

    「その秘密はねぇ、また後で教えてあげる」

    そう言うなりレナは抱えていた荷物を下ろし隊舎の入り口のたった二段にかない階段を一段だけ昇り回れ右をしてユナの方へ向き直る。

    そして…

    「ゼルゲン警備隊…ううん、我が家へようこそ!」

    差し出された手の中には新品で光沢のある部隊章が新しい持ち主を求めて光輝いていた。

    部隊章を受け取り、よく見るとそれはピンク色をしていた。正確にはピンク色の桜の花が背景として刺繍されており、その桜の花の上に被さるようにして小銃が2丁交差しているデザインとなっている。そして、絵柄の下には「THE 2nd REGIMENT」という堂々とした文字が刻まれている。

    ユナは自分の着ている制服上着の左腕を見た。上腕部に「3RD REGIMEN」と文字だけ書かれたシンプルな部隊章がマジックテープで張り付いている。部隊章のすぐ下には上等兵を表す階級章。

     

    …これともお別れなんだね…。

     

    マジックテープで張り付いている古い階級章を剥がしていく。軍学校の魔導科の生徒は皆この部隊章を付けている。入学から卒業まで約5年間も同じ部隊章を付けているというわけである。

    別れは出会いの始まりである…ユナはこの時改めてこのことを知った。

     

    5年間の思い出を大事にポケットにしまい込み新しい部隊章を貼り付けた。

    いま彼女の胸にあるのは希望と不安のみ。目の前の隊舎の玄関がまるで鋼鉄製の巨大な扉のように見えてくる。

     

    後のことは緊張のあまりよく覚えてはいない。気づいたら扉を開けていて、開けた瞬間そこには中年で少し厳つい感じの男が仁王立ちしていた。ほとんど放心状態で扉を開けたユナにとっては酷い不意打ちで、驚きのあまり本能的に一歩下がろうとした結果、本来なら簡単に昇り降りできる入り口のたった二段しかない緩やかな階段を派手に踏み外して、そのまま地面へ尻から着地してしまった。

    「っ!ぁうっ!」

    「ユナちゃん!」

    事態を素早く読み込んだレナがすかさずユナに駆け寄った。

    「大丈夫っ?」

    見るとユナは右手でお尻の辺りを押さえ、必死に何か言おうとしている。

    「……び…」

    「び?」

    「…び……び………尾てい骨……い…たい……」

    レナがユナの腰骨に指を当て、少しずつ下へなぞる。そして丁度尾てい骨の辺りまで来ると…

    「あ…まがってる…」

    骨で支えられて硬いはずの場所が、少し柔らかくそして普通よりも凹んでいた。

     

    * * *

     

    隊舎内、受付ロビー。

    「いやー、すまん、すまん。驚かすつもりは無かったんだよ」

    警備隊の隊舎は入ってすぐに受付ロビーとなっており、来客用の3人掛けソファーが3つ病院の待合室のように配置してあり、そのすぐ奥には受付カウンターがある。そう、例えていうなら小さな郵便局であろうか。

    「すまんじゃ済みませんよ!いくらなんでも扉のすぐ後ろで到着を待つのはいい加減やめて下さい、隊長!」

    子供だましのような弁解にすかさずレナが突っ込む。

    「…え?…隊長…?」

    「あ!紹介してなかったね。この人が隊長、ここで2番目に偉い人だよ、ユナちゃん」

    「その通り!私がゼルゲン警備隊の隊長、グラン・シルベールだ。まぁ、所属部隊は違うから臨時の隊長を勤めている。臨時といってももう何年になることやら。正式な自己紹介とか申告とかは皆がそろってからやるから今日はゆっくり休むといい。首都からの長距離列車じゃ流石に疲れてるだろう」

    「あ、ありがとうございます」

    「じゃあ、私が部屋まで案内するので隊長はもうしばらく受付をお願いします」

    そういうなりレナは、一緒においでと一言だけ言いユナの荷物を持ってカウンターの奥へ歩いていく。ユナもそれに習い後ろをついて歩く。

    カウンターの奥はリビングのような部屋だった。中央の食卓テーブルを筆頭にキッチンやシャワールームなどといった生活には欠かせないスペースがしっかりと確保されている。

    そして部屋の一番奥には二階へと続く階段がある。

    「カウンターより奥は生活スペースだから遠慮せずに自由に使っていいよ。…とはいっても娯楽とかは揃ってないから、本当に生活をするだけなんだけどね」

    確かにこの空間には皆でもしくは一人でも楽しめそうなものは何一つないように見える。唯一、新聞や読みかけと思われる本の類が散見される…。

    「そこの本たちの中にはエロ本もあるから気をつけて。別に見たいならみても良いけど…」

    「え゛…」

    「じゃあ、二階に行こうか!」

    今のは聞かなかったことにしよう、などと思いながら二階へと続く階段を荷物を引っ張りながら昇る。尾てい骨周辺の痛みを気にしつつも階段を昇りきるとそこは廊下であった。昇りきった階段のすぐ隣には、まだ3階へと続く階段もある。

    廊下の幅はそんなに広くはなく、まるで木造のアパートのようにそれぞれの部屋の入り口を示す扉が3つ並んでいた。

    手前から201号室、202号室、203号室。

    「ここが居住スペース、つまりは営内だね。それでー…あのー…申し訳ないんだけど、見ての通り部屋が3つしかないでしょ?だからー、えーっと…あ、相部屋でも大丈夫かな、二人で」

    これからしばらく、ここの生活に慣れるためには一人では心細いかもしれない…でもここでレナさんと一緒の部屋になっておけば実に心強い味方。第一、階級の低い私が断れるわけがない。

    「もちろん、大丈夫ですよ!むしろ、お願いします!」

    「良かった!部屋が足りないからどうしようと思ってて…ユナちゃんが心の広い娘で助かったよー。じゃあ、ユナちゃんの部屋は202号室ね」

    部屋に入ると机と木製のベッドがあった。それ以外は特にものが置いてなく、生活スペースと言う割には意外とスッキリしている。

    「ユナちゃんの場所はこのつい立の向こう側だよ」

    入ったばかりでは気づかなかったがこの部屋は中央につい立を置いて二つの空間に分けているようだ。ということは、この部屋は案外広い部屋なのかもしれない。

    丁度、入り口のようになっているつい立と壁の隙間から中に入ると同じように机とベッドが配置されていた。

    「じゃあ、部屋に着いたことだし、後は荷物片付けるなり寝るなり好きにしてて良いよ。私と隊長は一階にいるから、暇だったり何か分からないことがあったらいつでも聞きにおいで。あとー、これ冷シップ!お尻に貼っておくといいよ」

    「助かります!ありがとうございますぅ」

    「じゃあ、夕食くらいにまた来るから、どうぞごゆるりと」

    レナを部屋から見送ると、とりあえず貰ったシップを貼っておくことにした。

    「…んっ!冷たっ!」

    そして少しだけベッドで休憩しようと横になると意思とは関係なくユナは深い眠りに落ちた。途中、部屋に入って来て彼女に毛布を掛けたゴツイ腕に気づくことはなかった。軍人と言えど17歳の女の子。やはり疲れが溜まっていたのだろう。

     

    しばらくの間、部屋には規則正しい寝息だけが聞こえていた。

     

     



    つづく

     

     

    警衛記録簿



    ◎「ゼルゲン小規模駐屯地 警衛記録ぼ」◎




    第1部 国防陸軍ハ国民ト領土ガ脅カサレル時、初メテ其ノ独立ヲ守ルモノトス。



    ☆第一章 上等兵、着隊